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 リレーエッセイ

今月のお題 「外の空気」
Terry


 仕事で煮詰まって、ちょっと気分転換に外の空気にでもあたろうと思う。エレベーターに乗り1階ロビーから外に出ると、外の空気は実は、結構煙たいのである。新入社員だった頃は、かなり昔の話になってしまうが、オフィス内は喫煙自由だった。ヘビースモーカーの上司の机には吸いかけのタバコがいつも置きっぱなしになっていて、一筋の煙があがっていたものである。やがて就業時間中は禁煙となり、さらに喫煙場所以外は禁煙となり、今ではビル自体が全面禁煙となっている。スモーカー達はある一定の周期で、24階建てのビルから1階まで降りていき、ビルの外に出て一服つけることになる。ビルの周りには、タバコを吸っている人が常時何人かはいる。仕方なく外に出たからか、ビル風が強いためか、たいていの人はビルの出入り口付近でタバコをくゆらせている。おそらく、警備員さんも気をきかしてその辺りに灰皿なんかも置いてあるのだろう。しかし、ビルに出入りするたびに、タバコの煙で燻されるのもあまり気持ちのいいものではない。

 禁煙ビルの周りだけではない。朝の通勤でも地下鉄は全面禁煙だから、地下鉄を出てからビルに入るまでの路上が唯一の喫煙場所となる。地下鉄の出口の階段を上りきったところでいっせいにタバコに火をつける。そのため、歩道を歩いているとやたらけむいのである。交差点の信号待ちだと、風上から灰が飛んできたりもする。さらに、都会だけではない。山小屋も今は禁煙。先日北アルプスの山小屋に泊まったが、日暮れ間近の穂高岳を見ようと外にでると、やっぱりタバコ臭い。みんなタバコを吸うために、冷えてきた外に立っていたのである。

 喫煙は個人の自由である。別に法律で喫煙が禁止されているわけでもない。しかし、タバコが健康にとって有害であることは、明らかなことである。世界的に公共の場を禁煙とするようになったのは、受動喫煙の害がはっきりしたからである。当初はタバコの害は吸っている本人にのみ帰属していると考えられていたので、タバコの有害性がはっきりしていたとしても、どこで喫煙しようが無頓着であった。しかし、受動喫煙、つまりタバコを吸っている人の横でその煙にあたっている人が健康被害を受けていることが明らかになったため、公共の場の禁煙化が進んだのである。自分が喫煙しないのに、横の人が吸っていたタバコの煙で肺がんになるのはあまりにも理不尽である。公共の場での喫煙は、いわば回りの人に対するゆるやかな殺人なのである。そう考えると、ビルや地下鉄の全面禁煙は非喫煙者にとってはありがたいのだが、屋内の受動喫煙が屋外にシフトしただけのようにも思われる。東京都千代田区は道路上も禁煙をすすめているが、受動喫煙防止の観点からいえば公共の場として路上こそまさに禁煙とすべき場所だといえよう。もちろん、スモーカーを締め出しても行き場がない。喫煙人口にみあっただけの喫煙場所をつくっていくことも大切である。



来月のお題は未定、あきら♪がお届けします。

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